複数の会社を経営する場合の資金調達・・・1社あたりの資金調達可能額は小さくなる!?

ある顧問先様が新会社を立ち上げることになりました。現在営んでいる業種とは全く違う業種です。銀行の担当者から、「社長が同一だと融資枠が減るので奥様を社長にしてはどうか?」という提案があったようです。

確かに金融機関は、複数の会社でも実質一体と見なせば融資額を合算して管理するため、1社あたりの借入上限額は小さくなります。例えば、日本政策金融公庫の無担保融資枠は2,000万円ですが、先述の顧問先様は既に1,800万円の借入残があるため、新会社での創業融資は200万円が上限となります。

銀行の担当者が言うように、奥様が新会社の代表となれば、既存の会社との関連性はありませんので、通常通り2,000万円の枠内で検討してもらうことができます。

ただ、「社長を同一にしない方が融資をより多く受けられるから良い。」という単純な話でもありません。金融機関の面接は肩書き上の社長が行いますので、専業主婦である奥様が金融機関の面接を上手く乗り切れるかという問題があります。融資枠を減らさないように第三者を社長に据えたところで、そもそも審査に通りにくくなっては本末転倒です。

創業融資の審査は自己資金とキャリアが重視されます。名目だけの社長を引き受けるのに自己資金を投入してくれる方は稀でしょうし、新会社で行う事業に適したキャリアを都合よく有している人材も少ないと思います。融資枠を減らさないために第三者を社長に据えるプランは、本当に経営を任せられるぐらいの人材がいて初めて成り立ちます。

複数の会社を経営しても金融機関から得られる与信は1社分であることを考えると、既存の事業が成長段階にあり、まだまだ資金ニーズがある状態で新会社を立ち上げるのは、財務戦略上良くないことが分かります。もちろん、資金を調達する必要がない事業モデルであれば問題ありませんが、新規事業も資金が必要な事業であれば、最も重要な経営資源が分散してしまいます。

よって、中小企業の場合は借入に頼って事業を多角的に展開するのは困難です。どうしても複数の事業を展開したいと考えるならば、資金のいらない事業モデルを考案するか、まずは小さく事業をスタートさせて、お金ではなく時間をかけて育てていくのが現実的です。

こんな相談にも乗っています。ぜひご活用ください♪

info@asaitax.jp

キャッシュを稼ぐ力を強化する …キャッシュフローの良いビジネスモデルを構築しましょう。

選択したビジネスモデルによって、将来が大きく変わるのは当然です。しかし、同じビジネスモデルであっても、選択する取引条件が違えば同様に将来は変わります。

月額3万円程度の利用料を売上高とするA社とB社があります。A社は普通に契約月から毎月3万円の利用料を徴収していますが、B社は当初6か月分の利用料を一括で徴収しています。

A社は毎月5件程度の新規契約を獲得していますが、損益分岐点売上高に達するまでには長期間を有しますので、資金繰りは非常に厳しい状況です。また、現状の業績では金融機関を頼ることもできません。

一方B社も、A社同様当初は毎月5件程度の新規契約でしたが、初月から100万円程度の収入がありましたので、すぐに営業マンを増員し、今では月商1,000万円に迫る勢いです。A社とB社は類似したビジネスモデルですが、取引条件の違いで結果は大きく違っています。ソフトウェアの受託開発をしているA社と、ソフトウェアをパッケージ化して販売しているB社があります。A社の開発期間は数か月に及びますが、代金を全額回収できるのは開発が完了した後です。一方のB社はソフトウェアを商品化しているため、販売した翌月には代金を回収することができます。

A社は開発期間の人件費を確保するため、いつも資金繰りに奔走しています。また、売上高を増やそうと思っても、さらに多くの人件費が必要になるため、思うように売上高を増やすこともできません。一方のB社は、パッケージ商品の販売ですので、資金を気にすることなく売上を増やすことができます。そして稼いだ資金を次の開発に投資しています。

潤沢な自己資金を有している中小零細企業は少なく、また、借入にも限度があります。よって自力でキャッシュをどれだけ稼げるかどうかが成否を大きく左右します。もちろん利益も重要ですが、いくら利益率の高いビジネスモデルであっても、売上代金を回収するまでの期間が長ければ、事業の継続は困難です。

・売上代金をもっと早く回収できる方法はないか?
・支払をもっと遅らせる方法はないか?
・在庫の回転期間をもっと短くできる方法はないか?

キャッシュを稼ぐ力を強化するため、今一度考えてみてはいかがでしょうか。